コーヒーに限らずですが、日々進化をしているものは多いです。
古き良きものは大切にしつつ、そこに何かしら良くなるものを加えたり改善を加えていけばそうなるのも当然といえば当然ですね。
私は文具が好きですが、好きな理由の一つに常に進化している。進化していることを感じられるということが大きいです。文具(文房具)って、おおよそ書くものと書かれるもの(ノートやメモ帳)、切るもの、貼るもの、綴じるものぐらいじゃないですか。
それが新商品の発売時期に次から次に新商品が出てきます。もちろん全部ではないですが「こんな機能は今まで無かったよね」「こんなアイデアは面白いね」と新しいものが何かしらあることが多いです。
コーヒーの「進化」で言えばもっとも私達消費者に近いところで言うと、コーヒー豆が入っているパッケージのガスバリア性や遮光性がより良くなり、コーヒーの保存性が高まる。
また、抽出するコーヒーメーカーの機能の進化。最近ですとIoTを応用したものも出てきています。
では、私達から遠い生産国での進化は、どうでしょう?
最近は熱をほとんど加えないドライヤー(乾燥機)などもあるそうです。
今回は、その中でもコーヒーの風味を大きく左右する「精選処理方法」について考えてみます。
コーヒーの精選処理方法のまとめ
コーヒーの精選処理方法と言うと一昔前でしたら、水洗式と非水洗式。最近ではこれらをウォッシュドとナチュラルと呼ぶことが多いですね。これにパルプドナチュラルに、せいぜいスマトラ式くらいを理解していれば十分な感じでした。
最近はハニープロセスをはじめ、色々と増えてきて私も頭の中がこんがらがることが多いのでまとめてみます。
ワタルさんが、わかりやすく説明されているので引用させて頂きます。
<メジャーな生産処理一覧>
比較的、新しい精選処理方法について載せておきます。
<ハニープロセス>
コスタリカで生み出された生産処理プロセスで、パルプドナチュラルに大別されます。ミューシレージリムーバーの水圧によって、ミューシレージの除去率を変え、よりテクニカルにパルプドナチュラルが行われているようなイメージです。ミューシレージを除去するホワイトハニー(メカニカルウォッシュ)、ミューシレージを5割程度の残すイエローハニー、ほぼ100%残すレッドハニーが代表です。こうしたハニープロセスの細かな表現も農園により変化があり定義付けはしきれていないのですが、ブラックハニーは、100%ミューシレージを残した状態かつ糖度が高いチェリーをスロードライングした処理とコスタリカのブルマスなどでは表現しています。スロードライを行う事で、パーチメントの色が黒くなる為、ブラックハニーと呼ぶようになったようです。撹拌の回数などでもパーチメントの色の変化が出てくるので、乾燥方法によって分類されるケースもあります。
<ケニア式/ダブルフリーウォッシュド>
ウォッシュドプロセスでウォッシングさせたパーチメントコーヒーを一定時間きれいな水に浸けた後に乾燥させるプロセスです。いわゆるソーキングというプロセスで、グアテマラのエル・インヘルトもこの方式を取っています。風味に対する影響は諸説ありますが、クリーンになる為にアシディティや甘さが明確になるとも言われています。コスタリカなどでは、ホワイトハニーの後に、ソーキングを行う事をダブルウォッシュドやダブルフリーウォッシュドなど読んでいます。モンテコペイでは、甘さを強調する目的でソーキングを2回繰り返すトリプルウォッシュドを行っていたり、パストーラでも3日間水を入れ替えながらソーキングを行う独自のケニアプロセスがなされています。ただし、ソーキングを行う事でパーチメント自体の強度が落ちるために、こうした特殊プロセスの乾燥にはかなりデリケートになるようです。
他の精選方法についても詳しく知りたい方はワタルさんのページを御覧ください。
嫌気性発酵(アナエロビコ)の問題点
前置きが長くなりましたが、本題です。近年、より良い品質のコーヒーを作るために頑張っている生産国の一つにコスタリカがあります。コスタリカの豆を日本でもメジャーにしたのが先程の「ハニープロセス」だと思うのですが、それがさらに「進化」した「アナエロビコ」です。
昨年のコスタリカCOEの上位でこのようなプロセスのコーヒーが出品されました。シナモンのようなフレーバーを有したこのプロセス。嫌気性発酵(アナエロビック・ファーメンテーション)とも呼ばれています。
何がされているかというと、イエローハニーやホワイトハニーなどで除去された別ロットのミューシレージとレッドハニー(ミューシレージがまだ付いたパーチメントコーヒー)を1つのタンクに浸けて密閉。ミューシレージの酵素反応によって発生する炭酸ガスの圧力によって、パーチメントコーヒーの中に通常以上のミューシレージ成分を浸透させることが狙いです。ウエストバレーでこの生産処理を行っているルイス・カンポス氏は、15~18時間の密閉状態を作り、このプロセスを実践しています。また、このプロセスの肝となるのは、良い条件で生産・収穫された完全完熟チェリーが2ロット必要な点です。この双方のチェリーが共に良い状態で揃わないと、不完全なミューシレージ成分を付着させる事となり、求めた味わいは再現できないと言います。
この他にも、今年のベストオブパナマで見かけたマンゴーピューレに付けたコーヒーやエスメラルダが二酸化炭素充填で密閉発酵させるカルボニック・マセラシオン(アナエロビコのミューシレージなしのようなイメージ)をしていたり、密閉せずにミューシレージを追加してシュガースイートと呼んだり、様々な独自性の探求が日夜行われています。
より良いもの、より美味しいものを作るために生産国の方々の努力には頭が下がります。
このアナエロビコで引用部分にも出てきましたがマンゴーピューレで風味を付けたり、シナモンで風味をつけたものが出てきています。つまり、コーヒーの生豆の状態ですでに「フレーバー」が付いています。
数年前にコスタリカCOE(カップオブエクセレンス:品評会)で、こうして作られたコーヒーが上位に入り、その後高値で取引されたそうです。
何が問題なのか?
その生産者はCOEにコーヒーを出した時点では、普通に精選処理したコーヒーだと言っていたそうです。その時は確かシナモンで風味をつけていたそうなのですが、そのことを一切開示していなかったのです。
それを言ってしまったら、高く売れないから言わなかったのでしょう。
コスタリカでは、現在アナエロビコで作られたコーヒーをコーヒーとして認めていいのかと揺れているそうです。
「より美味しいもの」を作るための進化として、私はアナエロビコはあっていいと思います。
ただし、普通のコーヒーとは違い精選処理する段階でシナモンで風味を付けたものだということを、しっかりと情報開示して欲しいです。
アナエロビコも、近い将来日本のカフェで飲むことが出来るようになると思うので飲んでみたいです。
最後まで、読んでいただきありがとうございました。