コーヒーとはちみつと私

【コーヒー&はちみつペアリング研究家】普段、私がコーヒーとはちみつをどんなふうに楽しんでいるかご紹介させて頂きます。

【凶暴すぎるミツバチ】"キラービー"ブラジルで起きた伝説級の事故の顛末

人工的に生み出された"キラービー"「アフリカナイズドミツバチ」

先日、podcastでコーヒーの番組を聴いていました。
 
すると、ブラジルで人工的に作り出されたミツバチがコーヒーの花の受粉をするとコーヒーの品質が向上すると言うような話が出回っていると言うのを聞きました。
 
アラビカ種において、ミツバチをポリネーターとして受粉をしたことで収量がアップしたと言う話は聞いたことがあります。
 
品質が向上したと言うのは初めて聞きました。
 
「そう言われている」と言うだけで、真偽のほどは定かではありません。
 
どちらかと言うと、私も疑っています。
 
そこも少し気になったのですが、それ以上に気になったのがブラジルの人工的に作られたミツバチの話です。
 
コーヒーの番組なので、ここでミツバチについて掘り下げて話される事はなかったです。
 
すぐに調べてみると、それは「キラービー」とも呼ばれるかなり凶暴なミツバチ「アフリカナイズドミツバチ」のことのようです。
 
一体なぜ、人工的に凶暴なミツバチが作り出されたのでしょうか。
 

ブラジルで起きた伝説級の事故

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この60年ほどの間に、新種のミツバチがゆっくりと南北アメリカ大陸を北へ勢力を伸ばしているのがキラービーと呼ばれているハチです。
 
このミツバチは、性格のおとなしい在来種のミツバチに接近し、巣を乗っ取り、女王蜂を殺害し、働き蜂を奴隷にします。
 
こうして一度、巣を設営すると、極めて獰猛な性質を発揮して守り抜きます。
 
もし万が一、このキラービーのコロニーを刺激してしまうと、何千匹と言う集団が攻撃を仕掛け、攻撃者を必要に追跡し、毒針を雨のように降らせます。
 
聞いているだけで恐ろしいですよね。
 
そして、もっと恐ろしい事はこのキラービーは実験室で人工的に生み出された「失敗作」が脱走したものだそうです。
 
それこそが「アフリカナイズドミツバチ」です。
 
名前の由来は、このハチが西洋ミツバチとアフリカミツバチの、2種の亜種を交配したものであることからきているそうです。
 
アフリカナイズドミツバチの外見は、セイヨウミツバチとそっくりなので、専門家でさえDNA鑑定を行わないと見分けがつかないそうです。
 
しかしその習性は真逆と言っていいほど異なります。
 
この交雑腫は1950年代半ばに、ハチを専門に研究する科学者、ワーウィック・カーの手により作り出されました。
 
カーの研究は、ブラジルでの養蜂に適したハチの品種改良でした。
 
ミツバチは、もともとはアメリカ大陸が原産ではなく、ヨーロッパやアジアの一部やアフリカ原産で、蜂蜜や蜜蝋を採取するためにアメリカに持ち込まれたものです。
 
一部のミツバチは逃げ出し野生化していますが、本来は牛などの家畜と同様に、人の手によって交配が行われ、集蜜力や病気への抵抗力などが強化されています。
 
カーもこのような試みをしていたそうです。
 
セイヨウミツバチは日本でもお馴染みですね。集蜜力には優れているのですが、残念ながらブラジルの気候には適していなかったそうです。
 
病気に弱く、熱帯の捕食動物の餌食となっていたのです。
 
一方、アフリカミツバチは集蜜力はあまり優れていませんが、ブラジルの熱帯気候にはよく適応し、病気にも抵抗力がありました。
 
ここまで聞くと、私でもセイヨウミツバチとアフリカミツバチを掛け合わせたら集蜜力の優れた、なおかつ病気にも強いミツバチができるのではと思ってしまいます。
 
カーも同じように思い、この2つのミツバチを掛け合わせ、集蜜力が高く病気に強いハチを作ろうとしたようです。
 
ただ1つの問題として、セイヨウミツバチと比較するとアフリカミツバチの巣の防御本能がかなり高いことでした。
 
アフリカミツバチがこれほどまでに凶暴に進化した理由は定かではありませんが、生息領域を同じくする脊椎動物の捕食者に対抗するためだったのではないかと推測されているそうです。
 
そして、彼が生み出したアフリカナイズドミツバチは、思っていた通りブラジルの気候に非常によく適応しました。そしてブラジルで蜂蜜の生産量向上の立役者になると思われていました。
 
ところが、アフリカミツバチの凶暴性は消えませんでした。
 
そして、ラボでの事故が起こりました。
 

ラボでの大事故

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カーの留守中に、外部の研究者が26匹のアフリカナイズドミツバチの女王蜂を、実験施設からうっかり逃してしまったのです。
 
アフリカナイズドミツバチは、野生のコロニーを形成し、在来のセイヨウミツバチと交配して、南アメリカ中に広がり始めました。そのあげく、中央アメリカ、メキシコ、アメリカ南西部にまで到達してしまいました。
 
セイヨウミツバチにとっては、これ以上にない災難です。餌はアフリカナイズドミツバチと競合する上、競争に負けます。
 
そしてアフリカナイズドミツバチは、積極的にセイヨウミツバチの女王を殺して巣を乗っ取ります。
 
ブラジルでは、当初の思惑通り蜂蜜の生産量は向上しましたが、かなり凶暴なハチが広く分布するという事態になってしまいました。
 
そして、その大事故から半世紀以上経った今、ようやくアフリカナイズドミツバチが以前よりも性格が穏やかになったと言われているそうです。
 
はっきりとした要因はわかっていませんが、性格の穏やかなセイヨウミツバチと交雑を繰り返しているうちにそうなってきたのではと言われています。
 
もう少し詳しく知りたい方は、この下のリンクをご覧ください。
 
より病害虫に強い農産物を作ろうと思うのはごく自然なことだと思います。
 
なおかつ、収穫量を増やしたいと思うのもごくごく自然なことだと思います。
 
ただそれが、生態系を破壊しかねない事態を招く可能性があると言うことを私たちは知っておく必要がありますね。
 
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。