ミツバチは「波が一切立たない湖面」の上では突然墜落する
ミツバチは「波が立たない鏡のような湖」の上を飛ぶと、なぜか突然湖に墜落してしまうことがあるそうです。
これは「天井と床が鏡張りになったトンネル」を使った実験によってもミツバチが墜落することがわかっているそうです。
なぜそのようなことが起こるのか?
それはミツバチが高度を見失ってしまうことによって起きるようです。
訓練したミツバチに「湖の上を横切るコース」を飛行させる実験
1963年、昆虫学者のハーバート・エラン氏とマルティン・リンダウアー氏の研究チームは、訓練したミツバチに「湖の上を横切るコース」を飛行させる実験を行いました。この実験からは、水面が波打っている場合はミツバチが通常通り目的地までたどり着けるものの、水面が波打たず「鏡面のように滑らか」になった場合、ミツバチは高度感覚を失って湖面にぶつかってしまうことが明らかとなりました。
エラン氏らの実験結果は「ミツバチは視覚的な手がかりを使って飛行している」という考えを支持するものです。この考えについて、新たにフランスのエクス=マルセイユ大学の研究チームは、ミツバチが飛行中の高度を調整する方法を確かめるために特殊なトンネルを用いた実験を行いました。
最近の実験かと思いきや、1963年に既に行われていた実験です。
今回の実験では、研究チームは長さ220cmの「天井と床が鏡張りになったトンネル」を屋外に設置しました。トンネルの一方の端にはミツバチが飛び立つスタート地点があり、反対側には報酬となる砂糖水が配置されていたとのこと。そして研究チームは、天井と床の鏡を「通常の壁に見える覆い」で隠したり隠さなかったりして条件を変え、ミツバチがどういう条件の下で正常に飛べるのか、あるいは飛べないのかを調べました。
天井と床の鏡を覆いで隠した場合、つまり「通常のトンネルと同じ条件」では、ミツバチは砂糖水の置かれた反対側まで問題なく飛ぶことができました。また、天井の覆いを外して鏡にした場合、つまりミツバチ視点からは「トンネル内の高さが上方向に2倍になった条件」でも、ミツバチは砂糖水にたどり着くことができました。
しかし、地面の覆いを外して鏡にした場合、つまりミツバチ視点からは「トンネル内の高さが下方向に2倍になった条件」では、スタート地点から約40cmほど飛行したところで高度を失い始め、すぐに床にぶつかってしまいました。また、天井と床の両方の覆いを外した場合、つまりミツバチ視点からは「上下が鏡合わせになってトンネル内に無限の空間が広がる条件」では、スタート地点からわずか8cmほどで高度を失い始め、床にぶつかってしまったとのことです。
さらに、トンネルの前半は鏡を覆い、トンネルの後半で覆いを外して鏡を露出させた場合でも、やはりミツバチは床にぶつかってしまったと研究チームは報告しています。
実験結果から見て取れること
人間が空間識失調に陥った場合は、自身の感覚よりも航空計器の表示を信じて操縦することでどうにか姿勢や高度を制御できます。しかし、ミツバチの場合は視覚的な手がかりや感覚の他に頼れるものがないため、腹側の視覚以外の情報が少ない広い湖面や狭いトンネルの中では、高度感覚を失うとそのまま墜落してしまうと考えられます。
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