2020年の日本の輸出事情
①輸出額が大きい国・地域
香港(2061億円)中国(1639億円)アメリカ(1188億円)台湾(976億円)ベトナム(537億円)
②輸出額が多い品目
アルコール飲料(710億円)ソース混合調味料(365億円)清涼飲料水(341億円)ホタテ貝(314億円)牛肉(289億円)牛乳・乳製品(222億円)
③輸出額の増加が大きい国・地域
中国(102億円)ベトナム(83億円)台湾(73億円)
④輸出額の増加が多い品目かつお・まぐろ類(51億円)アルコール飲料(49億円)
牛乳・乳製品(38億円)清涼飲料水(38億円)鶏卵(24億円)
アジア各国とアメリカが輸出の中心で、輸出品目では1次産品よりも単価の高い加工食品が上位を占めている。アルコール飲料の輸出額増加の背景には世界的な日本産ウイスキー人気の高まりがある。一方で牛乳・乳製品はベトナムで育児用調製粉乳が人気になっていることが一因のようだ。
インスタントコーヒーの輸出が伸びる
財務省の貿易統計を基にコーヒーの輸出入を見てみよう。まずは輸入。コーヒー生豆は39万1611トンで1134億円。輸入相手国はブラジル、コロンビア、ベトナムの順(金額ベース、以下同)だ。
煎ったコーヒー(レギュラーコーヒー)は7367トンで124億円。相手国はスイス、アメリカ、イギリスの順である。
インスタントコーヒーは1万700トンで106億円。相手国はブラジル、ベトナム、ドイツの順となっている。これらを合計すると輸入額合計は1364億円になる。
一方、輸出はというと、コーヒー生豆はわずか3292キログラムで580万7000円。煎ったコーヒー(レギュラーコーヒー)は1934トンで34億4820万円。相手国は中国、台湾、香港の順だ。
インスタントコーヒーは6170トンで92億3100万円。相手国はロシア、中国、アメリカの順。これらの輸出額合計は126億8500万円。コーヒーに関しては、輸出は輸入の10分の1以下にすぎない。
しかし、インスタントコーヒーの輸出量、輸出額の伸びは目を見張るものがある。輸出量は前年に比べ3.06倍。輸出額も2.64倍と激増しているのだ。
インスタントコーヒー輸出増加の背景
<輸出者によると>とした記載内容はこうだ。
<新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休業要請や移動制限の影響を受け、世界における需要と供給のバランスを保つため、日本からは特にロシア、アメリカ向けの輸出が増加していること>
<家庭内における需要の増加が、家庭外での需要減少を上回り、世界的に需要が増加していること>
<中国において、カフェ等の進出により、若い世代へのコーヒーへの認知度が高まっていること>
やはりコロナ禍の影響を色濃く反映した結果のようであるが、ロシア、中国というこれまでコーヒー文化になじみが薄い国への輸出が上位に来ている点が興味深い。
コーヒー文化が急速に普及するロシアの事情
インスタントコーヒーの最大の輸出国はロシアで、金額ベースでは全体の31.7%を占めている。ロシアといえば、サモワールと呼ばれる湯沸かし器で入れた紅茶文化の国というイメージが強い。
ところが、いつの間にかロシアは世界でもそこそこのコーヒー大好き国になっていた。アメリカ農務省の資料(2020/2021)をみると世界のコーヒー国別消費量は以下の通り。
①EU 28% ②アメリカ 16% ③ブラジル 14% ④日本 5% ⑤フィリピン 4% ⑥カナダ 3% ⑦ロシア 3% ⑧インドネシア 3%
コーヒー生産国のコロンビアやベトナムよりも消費量が多いというから意外だ。ロシア国内の2019年のコーヒー消費量は18万トンに達し、紅茶の14万トンを初めて上回ったという報道もある。
ロシアでも飲食店の営業停止、外出自粛などの措置が取られたことで、内食志向が高まり、それがインスタントコーヒーの需要増につながったとみられている。
生産地・ブラジルやベトナムなどから輸入されたコーヒー生豆を、日本で焙煎して数種類をブレンドし、グラインド(機械で挽く)してから、コーヒーを抽出。それをフリーズドライ製法(真空凍結乾燥法)やスプレードライ製法(噴霧乾燥法)でコーヒー粉(粒)にする。そんな工程を経て出来上がったインスタントコーヒーが、船でロシアや中国、アメリカなどに輸出され、家庭や職場の食卓で飲まれているのだ。