はちみつは加熱すると、せっかく豊富に含まれている栄養素が死滅すると言われています。何度までなら大丈夫なのか?何度までなら非加熱と言えるのか?
そんな議論がなされることもよくあります。
「非加熱はちみつです」と謳って販売されるところもありますし、消費者の方も「このはちみつは非加熱じゃないんですか?」と気にされる方もいらっしゃいます。
そこに一石を投じるようなニュースが出ていました。
義母が、こんなのが新聞に載っていたよとLINEで送って来てくれました。ありがたいです。
大きく見出しに書かれているのは、なんと「ハチミツ 加熱で免疫アップ」と。
そして「180度で1時間、効果物質5倍」とあります。
加熱したはちみつの免疫賦活作用
名古屋市立大学の研究グループは、北京大学、自然科学研究機構、富山大学との共同研究で、ハチミツを至適な温度、時間で加熱処理すると、免疫力を高める作用を持つ顆粒性コロニー刺激因子(G-CSF)の産生誘導作用を持つ物質が生じることを発見した。
中国伝統医学では、生薬の消化管に対する機能を高めるため、ハチミツに浸してから炒めるという加工が行われている。先行研究で、この中国式の加工法により消化管上皮細胞におけるG-CSF産生誘導作用が得られることがわかっており、ここから、本研究ではハチミツを利用して加熱加工する意義に着目した。
今回、ハチミツを加熱加工すると、加熱加工していないハチミツでは認められなかった培養消化管上皮細胞からのG-CSF産生誘導作用が新たに生じることがわかった。この作用は、180℃、1時間の条件で最も高くなり、それ以上長い時間で加熱すると逆に活性が低くなることも見出された。
次に研究グループは、加熱加工ハチミツが実験動物レベルで免疫賦活作用を示すかどうかを検証した。マウスに加熱加工ハチミツを1日1回経口投与しながら飼育し、2日目の投与直後に化膿レンサ球菌をマウスの皮下に接種した。その結果、加熱加工ハチミツを飲ませたマウスでは有意な延命が認められ、それ以外のマウスは菌摂取の2日目までに全匹が死亡した。
本成果により、加熱加工ハチミツの摂取で細菌感染が予防できる可能性が示唆された。今後、感染症予防を目的とした、加熱加工ハチミツを用いた機能性食品の開発などが期待できるとしている。
簡単にまとめると、180度で1時間加熱したはちみつは免疫力を高め細菌感染を予防する効果が通常のはちみつの約5倍期待できるということかと思います。
ただし、1時間以上加熱すると逆に効果がなくなるようです。
ただし・・・
こちらの記事では書かれていませんが、こちらの記事の元となっている論文はこちらです。
記事内には書かれていない重要なポイントは以下の通りです。
- 中国では漢方薬を作る際、薬草(甘草)にはちみつを絡ませて加熱するが、この際消化管免疫系の機能が高まるのでこの検証をする実験であること。
- 使用したはちみつが中国のナツメ(シドル)1種類だけ。ナツメは元々免疫賦活力が高く、マヌカと同様に黄色ブドウ球菌に対する抗菌力が高いこと。また加熱にも強い性質がある為、何らかの関係があるのではないかと思われる。
- 一定温度かつ一定時間(180度1時間)の加熱に於いてのみ、免疫賦活力がアップする物質のサイトカインXを誘導する。それ意外では優位な数値はなかった。非加熱はちみつでは発生しなかった。
サイトカインXとは?
生体内では細胞の分化、増殖および恒常性を維持するために、細胞同士が様々な情報を交換していて、サイトカインXはその細胞間情報伝達物質(液性因子)として、免疫反応において中心的な役割を担います。
まとめ
今回の研究結果では、あくまでもナツメのはちみつを使ってG-CSF産生誘導作用を持つ物質が生じることによって免疫力が高められるということがわかったというものです。
これを使えば感染症予防を目的とした機能性食品の開発も出来るでしょうし、発展途上国における感染症予防に期待も出来るのではないでしょうか。
この結果を受けて何でもかんでも加熱すればいいことでは決してないです。
感染症予防、免疫力を高めることを目的としたいなら加熱するということはありでしょう。しかし、それ以外の部分では加熱しない方がいいことの方が多いです。もっと言えば、はちみつは極力高温で加熱することは避けたほうがいいです。
ちなみに、私が販売することも多い、こちらの「グアテマラ産コーヒーの花のはちみつ」は充填する際、60度にいかないように加熱しています。
「このはちみつは非加熱ですか?」と質問されることも、よくありますがもちろん正直に答えています。
先程の研究結果を受けて「ナツメは熱に強いので免疫力を高めたいなら180度で1時間加熱したものがいいよ」と答えるのもありでしょう。
180度で1時間加熱するというのは、現実問題難しいでしょうが。
最後まで、読んで下さりありがとうございました。